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『聲の形』聴覚に障害のある方がAmazonでレビューされてました

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↓目次

 

※この調査は10/5に行いました。引用したレビューの下線は、すべて筆者が付けたものです。

 

『聲の形』は感動ポルノだ、というネットの論調に対し、上の記事で反論の声をあげさせてもらいました。そのさい、ネット(主にtwitter)では批判が多いけど、Amazonのレビューでは「批判」「肯定」どっちの意見が多いんだろうという疑問が浮かんだんだ。

で、商品ページをのぞいてみると……。“聴覚に障害のある人”や“いじめられた経験のある人”がレビューしているじゃないか! これは目を向けるべきことだ……『聲の形』について批判であれ、肯定であれ、何か言おうとしている者は絶対に。

ということで今回、『聲の形(1)』(原作第一巻)Amazonレビュー129件における聴覚障害者さんの感想や作品に対する賛否の内容、高評価低評価レビューの共通点など調べてみました(聴覚障害者さんのレビューは3件、いじめられた経験のある方のそれは2件ありました)。なお、★の割合は以下の通り。

 

★5:85件(66%)

★4:20件(16%)

★3:7件(5%)

★2:5件(4%)

★1:12件(9%)

 

★4以上が8割越え! 緩やかに右肩下がりになるのは健全なレビューの証ですが、★1がぴょんとはねているのは怪しいですね。レビューの不正(?)も明らかにしていければと思います。ではさっそく。

 

 

聴覚障害者の方のレビュー

 

Amazon129件のレビューの中から、合計3件見つかりました。聴覚に障害を患っている方も『聲の形』読まれてたんですね。「そのレビューの内容」と「それを読んだ私の感想」を順に紹介していきます。

 

★★★★★ 共感できます

久留米のハオさん*1(2013年11月16日投稿)

 

俺も同じ聴覚障碍者で、普通学校を卒業しました。
西宮さんと同じように、健常者相手から荷物を盗まれたり、背後でばーかと連呼していたり(実は聞こえていた※簡単な言語は認識できる)「みみつんぼ!」と言われたり、意味なく殴られたり
散々、悲惨な目に合いました。心の傷は今でも癒えていません。
補聴器もなくなったことがあります。先生がその後クラスの皆に補聴器の説明をして、あとでこっそりと机の上に戻されていたことがありました。

……

「いじめる人は誰なの!?先生はそんな卑怯な人は好きではありません!!」と机をドンッと叩いて大声で叱ってくれました。
あれからいじめがピタッとなくなりました。

……

自分のことを思い出し、色々書いてしまいましたが、
このマンガを読んで共感できる部分がいくつがあり、
健常者の方々に読んでもらいたいと思いました。

……

過去に自分がいじめていたかどうか、見ぬフリをしていたかどうかを自問自答し、いじめられっ子に対してどうするか考えてください。

……

大切なことは過去いじめていた人が現在の学校などに「俺は過去いじめをしていた」と講演でもし、自分が思っている気持ちを言って欲しい。
自分の子供にも教育する。それ大切なことです。
いじめをなくそう!という動きは、いじめを経験した人の方がどういう場面にいじめを起こすのか、その後自分がどう思ったのか
という発言の方がよほど説得力があると思います。

……

障碍者としてそういう目にあったということを知ってほしいと思い、大勢の方に読んで欲しいと思います。

 

最初のいじめの内容が辛いです(「みみつんぼ」はひどいなあ)。こんないじめが実際にあった。「いじめる人は誰なの!? 先生はそんな卑怯な人は好きではありません!!」。竹内がこんな先生だったら硝子はいじめられなかったかもしれません。久留米のハオさんは『聲の形』を加害者に読んでいただきたいと述べておられます。そして、いじめの傍観者に。この作品が聴覚障害を患っている方の生きづらさを広め、いじめを抑制できたらと願います。

 

★★★★★ 聲の形

オリーブさん(2014年4月22日投稿)

 

私も聴覚障害があります。

筆談の手間や周りの反応や状況があまりにもリアルで、小さい頃の状況が思い出され、泣きました。
聴覚障害は別名[関係障害]とも言われます。相手がいて成り立つコミニュケーションが、相手によっては疎外されるからです。
他の障害とは質が違い、見えない障害への理解の難しさを、リアルに表現していると思いました。

当事者の苦しみがわざと書かれていない分、誰にでも分かりやすい表現で入ろうとしたのだと思えました。続きが気にぬります。(原文ママ

 

聴覚障害がコミュニケーション障害だということを、多くの人が指摘しています(たとえば、東京大学バリアフリー支援室)。見えない障害を漫画で目に見える形にすることで、『聲の形』を読んだ人が聴覚障害に伴う困難を想像できるようになる。

 

★★★★★ 私も難聴者です。

Amazonカスタマー(2016年5月10日投稿)

 

50歳を過ぎて購読いましたが、胸が熱くなりました。
私も手話を勉強しています。
難聴者は一見は健聴者と変わらないので誤解を招いたり、仲間外れにされることもあります。これまで普通に付き合っていた友人が離れていくのは悲しいものです。
健聴者の方もこのコミックを読んでいただくと、聞こえることがどのぐらい大切なことか解ってもらえると思います。原文ママ

 

本作は「聞こえないことの困難さ」の描写を介して、「聞こえることの幸せ」も映し出しています。聴覚障害は先天性のものだけでなく、事故や原因不明のまま急に聞こえなくなることもあります。難聴者になり付き合っていた友人が離れていくこと、これは誰にでも可能性があるということです。本書はもし誰かが難聴を患ったとしても、離れない方法を考えるためのヒントを与えている。

 

以上、3件ともに★5を付けてらっしゃいます。記載された内容が本当か確かめる方法はありませんが、文面から信憑性の高さが伺えますね。

 

 

いじめられた経験のある方のレビュー

 

こちらは2件見つかりました。以下「レビューの内容」と「それを読んだ私の感想」。

 

★★★★★ 救いのある漫画です。

Amazon Customerさん(2016年9月26日投稿)

 

(1巻から7巻まで読んだ感想です。ネタバレしたくないのでストーリーには踏み込みません)
私もいじめられっ子でした。
担任の教師は見て見ぬ振りをするどころか、いじめに加担して喜んでいました。今思い出しても、腸が煮えくりかえります。
そのため、読み進めるにつれて、つらい過去に縛られてしまい、全巻読了するのにもの凄く時間が必要でした。

この作品は、西宮硝子と石田将也が主人公です。
2人の間には、健常者同士ではありえない複雑な感情が生じています。
様々なエピソードが絡み合い、お互いに苦しみながらも、完結への未来に向かって進んでいきます。
ラストでどうなるのかは触れません。
否定的な意見も見られますが、批判するよりも作者の真意をくみ取るべきでしょう。

個人的には、ラストシーンも含めて漫画史に残る傑作だと思います。

 

作者の真意をくみ取るべき。まさにその通りですね。私も傑作だと思います。いじめの描写がリアルな分だけ、辛い人にはホントに辛い。でも、時間がかかってもレビュアーさんは最後まで読み続けたんですね。

 

★★★★★ これは凄い

Leonさん(2016年2月11日投稿)

 

月並みな言い方ですが、これは凄い。

このような作品に似たものを読みたい、と思うのですが中々思い当たりません。マンガであってマンガでない。石ノ森章太郎の言うところの「萬画」かもしれません。そして私が一番近い作品だと思ったのは、夏目漱石の小説「三四郎」です。

登場人物の心を、表現から手に取るように、といっても繊細・微妙に表現していて、ちょっと辛い・悲しい短調な話の作り方といった印象からです。

……

そして昨今のマンガの謎解き、背景を全部明らかにする、ということとは一線を画した明治・大正の「文学」や黒澤や小津の撮ったような登場人物の心を描く「映画」なのです。書かれていないことを読者が感じ取るというものです。

いじめ・いじめられた経験がある人間にはつらい内容があります。私もそうでした。でもそれはこの作品がある意味リアリティーが非常に高いということです。読み始めたら止まらず7巻まで読み切って3日経ちますが、毎日読み直しています。

読書百遍義自ずから現れる。読めば読むほど新たな発見があります。作者からのメッセージが伝わってきます。作者の今後の作品にも期待しています。

 

『聲の形』は、視点が一人称で進んでいく小説のようにも捉えられます。それに加えて主人公以外のキャラが多く、しかもそれぞれ個性も強い(コンプレックスの性質がそれぞれ違う)ということは、作品に新たな強みをつくりました。

それは、読者の想像できるエリアが広汎で多彩になったということ。将也以外のキャラクターの思考や感情を想像する余地(余韻)を、作品に多く含めることができました。『聲の形』は、小説のように想像することが重要なウェイトを占めていますし、読み返して楽しい強度も小説のよう。

小説よりの漫画。Leonさんは面白い指摘をされていますね。週刊少年マガジン上で新しい表現方法が、実は展開されていたんだ。

 

吃音症の方のレビューも。

★★★★★ 贖罪とコミュニケーションの難しさ

AmazonCustomer(2016年9月26日)

 

一巻だけで読むのを辞めてしまうと、この作品のテーマは見えなくなってしまうと思います。(というか誤解してしまうでしょう)
根底にあるのは「贖罪(償い)」と「コミュニケーションの難しさ」です。
人はどのようにして現実の辛さに向き合っていくのか……それぞれのキャラクターが一筋縄ではなく、細部まで練り込まれていることはまさに驚きでした。
全7巻と、そんなに巻数もありませんし、一気に最後まで読むことを強くお勧めします。

私は吃音症を持っていますが、ヒロインである西宮さんが、周りではなく自分を責めてしまう気持ちが分かって辛かったです……

 

 

高評価に共通するポイント

 

レビュー129件に目を通し、何回か挙がってるな~と感じた内容を以下に列挙しました。

 

いじめの描写がリアルで、きつい。

・そのため1巻は賛否両論の内容、2巻から面白くなる。1巻で止めずに2巻以降も読むべき。全巻読むと印象が変わる、でも1巻が一番重要。

・最後まで読み通したり、読み返したりすることで理解を深めていく楽しみがある。心情を想像する余地があり、一読しただけではわからないところも多い。つまり、読み応えがある。

・全体的にリアリティが鋭い。読者の過去に通じる現実が描かれており、自分の今と過去について向き合わされる。

・作者にいじめや聴覚障害に伴うコミュニケーション障害への理解がみられる。いじめの背景に潜む心理、関係性をよく見抜いている。

・いじめ加害者の視点で進むのはめずらしい。

・いじめや障害といった難しいモチーフに挑戦している。

いじめや障害ではなく、コミュニケーションの難しさが本質かつ上位のテーマ。

・絵柄が淡く、繊細。キレイ。

・新しい表現を追求されている

 

1巻が小学生時代のいじめをメインに描いているためか、いじめに関するコメントが多かった印象ですね。いじめの構造(退屈だからという理由でいじめる奴、悪気を感じない傍観者、解決しようとしない大人)を指摘する方も結構いました。

作者の描きたかったものは~、と作者目線になって考えている人もいましたし、表現方法について掘り下げて考察されている方もいた。

総合すると、漫画の内容について自分の頭で考え直している人が高評価を与えていました。全員がそうだというのはフェアではないが、そう感じましたね。

 

 

★2、1では何を言われている?

 

批判に共通するポイント

・ご都合主義(ヒロインの性格に納得がいかない、恋が不自然、きれいすぎる)。

・いじめ加害者が救済されている。

・作品が持ち上げられすぎ、期待外れ。

・ただ問題を考えるきっかけになるのなら、良いことだと思う。

 

とくにヒロインの性格への批判が多かったですね。聖人すぎると。なんでも怒らずハイハイ聞くのは、健常者の一員であろうとする彼女の弱さなんですが。「ごめんなさい」としか言えないのは、「障害者だから優しくしてやってるのに」と言われるのを恐れているように私には見えました。

★1が急に増えるのは、不正というよりはよく読んでないな~という感じがします。一読で終わっていて、その一読もさらっと読んだ程度なのかな。批判も一辺倒で、同じことを繰り返しているだけなんですよね。★4以上のレビューで見られたような意見の多様さはありませんでした。

絵が美少女なのが納得いかない!(……漫画やで)

 

 

硝子の未来の職業について(ファンブック)

 

余談。硝子の将来についてファンブックで示唆がありましたね。彼女はヘアサロンのらねこで働きはじめるのではないか、と。その姿をふと想像して思いついたことがあります。つまり、彼女が理髪師になるメリット。

障害のない人間の身勝手な解釈ですけど、非常に不謹慎ですけど、言いたい。

 

・会話しなくていい理由ができる(客にとって)

・髪カタログを見せて希望の髪型を指でさしてもらえる(客も選びやすい、声は不要)

・行動(洗面器の水を流す→髪を洗いますよ~のサイン)で先を促せるため、障害が弱みになりにくい

 

私が知っている限り、難聴を患っている方でユニバーサルデザインを追求している人や大学で教授をされている方がいます。聴覚障害者さんのなれる仕事の幅がもっと広がると、いい世界よね。

 

 

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*1:振動でメール着信や起きる時間を知らせてくれるリストバンドを買われています。聴覚障害者であるという言葉の信憑性は高いと思われます。……レビュー履歴を覗いてしまい申し訳ございません。