・食べ物をおいしく・車を絵画に・女性はポップなイラスト風にレタッチする方法
無料グラフィックソフト『GIMP』で様々な写真をレタッチしてみましょう! 人を惹きつける魅力ある写真が作れます。とくに食品や車、女性の写真をレタッチする手法の幅が広がりますよ。
↓食べ物をおいしそうに
↓車を絵画に
↓着物の女性をポスター風に(掲示板に貼ってありそうですね)
↓ポップなイラストも!
↑のような魅力ある写真を無料ソフトGIMPで作ってみましょう。この記事で紹介するGIMPの機能とできるようになるレタッチ方法は、
・『乗算』:ほの暗い雰囲気の情緒あふれる写真を作る
・『焼き込み』:日焼けしたような影を加え、写真にワイルドさを出す
・『ハードライト』:光を与えて食品をおいしく見せる
・『色相』:絵の具で塗ったような着色を表現し、渋い車のイラストをつくる
・『ポスタリゼーションレベル2』:コミック風のポップなイラストを製作する
です。さっそくGIMPに用意された機能の一つ『乗算』を使ってレタッチしてみましょう。「それだけか」と声が出てくるくらいGIMPでレタッチするのは非常に簡単だということが伝われば幸いです。
↓目次です
- GIMPの『ポスタリゼーション』『乗算』機能で写真をレタッチする
- 『乗算』機能でいろいろな写真をレタッチしていきましょう
- 『焼き込み』モードで写真をワイルドな印象に変えてみよう
- スクリーン・ハードライト・ソフトライトで写真を明るい雰囲気に変える
- 『色相』『色』モードを使って写真を抽象的なイラストに変える
- 色に変化のない写真は『微粒結合』がオススメ
- ポスタリゼーションレベルを「2」にして大胆にディテールを落としたイラストを製作する
GIMPの『ポスタリゼーション』『乗算』機能で写真をレタッチする
↑の写真をまず作ってみましょう。GIMPを利用したレタッチの過程をお見せしますので参考にしてください。
↓おおまかな手順です
写真を開く
① GIMPを起動し、画面の左上にある[ファイル]から[開く/インポート]を選択します。
表示される画面でレタッチしたい写真を選び、「開く」をクリックします。
↓GIMPで写真を開いた画面。これが無料のソフトとは思えないくらい本格的なツールが揃っています。
開いた写真をレタッチしていきましょう。
『ポスタリゼーション』をかける
② 画像を適当に右クリックし、[色]→[ポスタリゼーション]を順に選択します。
表示されるダイアログで「ポスタリゼーションレベル」の数値を調整します。
↓ポスタリゼーションレベルを調整するダイアログ(左下)。初期設定の数値は「3」です。
↓レベルを「4」に変更しました。写真が変化しているのがわかりますでしょうか?
↓レベルをさらに「5」に変えてみました。これが一番自然かな。
少しずつ絵が変わっているのがわかりましたか? 好みはありますが今回はレベル「5」で「OK」を押してみました。
↓『ポスタリゼーション』で写真がポスター風の絵柄に変わりました!
続いてレイヤーモードの設定を変更して加工した写真の色合いを調整します。
レイヤーとして開く
③ [ファイル]→[レイヤーとして開く]を順にクリック。表示される画面で元の写真を選択して「開く」を押します。
↓元の写真が開かれ、『ポスタリゼーション』(②の手順)で加工した画像の上に来ています
いよいよ最後の操作になります(次で終わり! 簡単ですね)。
レイヤーモードを『乗算』に変更する(これで最後)
④ 「レイヤー-パターン」ダイアログの右上のタブをクリックします。
下にズラッとレイヤーモードのオプションが表示されますので、『乗算』を選択します。
↓レタッチ後。ポスターに似合いそうな絵になりましたね
↓『ポスタリゼーション』のみの場合(左)と『乗算』も加えたもの(右)の比較
『乗算』も併せてレタッチした方が自然な色合いの写真になります。色のコントラストも引き締まって立体感も出ていますね。
↑の①~④までの操作が基本(ほぼすべて)です。少し先で説明する『乗算』以外の機能の場合も④で選ぶレイヤーモードが変わるだけですので、ほぼ操作方法はマスターしたと思っていただいて大丈夫です。
↓④「レイヤーモードを変更する」だけ操作が変わります
『乗算』機能でいろいろな写真をレタッチしていきましょう
↓怒っている彼女
目もとや口もとの影、鼻の輝きがイラストらしくなっていますね。
↓手乗りチュウ
↓シャープな猫
↑元の写真に比べて左の『乗算』後の写真は白と黒のコントラストが引き締まって見えますね。これは猫の影の部分がより強く濃くなったからです。このように『乗算』モードを使うことで陰影を上手く表現することができます。この特徴は「暗い雰囲気の写真」の加工に非常にマッチします。その様子をご覧に入れましょう↓。
“ほの暗い”雰囲気を出す
夜景など暗い場所で撮った写真に『ポスタリゼーション』『乗算』機能を使って“ほの暗く”してみましょう。↓の例のように写真のイメージが大きく変わりますよ。
加工後の方(左)が情緒がありませんか? これは『乗算』で加工することで写真の陰影のコントラストがより強くなり、オレンジの外灯が目にとまるようになったからですね。↑の例のように周りを暗くすることでライトを明るく見せ、情緒ある写真にレタッチできますし、↓のろうそくの火みたいに光を弱めてみても面白い。
↓誕生日ケーキ
『ポスタリゼーション』をかける際、ポスタリゼーションのレベルを大きくすることで明かりは小さく(ほのかな感じに)なります(試してみてください)。↑のケーキでは加工後のろうそくの火(左)が元の写真(右)より弱くなっていますね。光を抑えてあえてイメージのはっきりしない写真にすることで、複雑な感情を引き起こす写真を作れます。
↓線香花火も
このように『乗算』モードを使う場合は夜の暗闇を作るイメージでやると上手くいきます。一方次に紹介する『焼き込み』モードでは、暗闇ではなく「日焼け」したような影を乗せることができます。
『焼き込み』モードで写真をワイルドな印象に変えてみよう
操作方法は「写真を開く」(①)~「レイヤーとして開く」(③)までは同じです。「レイヤーモードを変更する」(④)で今回は変更するモードを『焼き込み』に変えてみましょう。
↓「レイヤーとして開く」まで行いました
↓『焼き込み』を選択します
↓レタッチの結果です。肌が日焼けしたような感じになりましたね。
↑元画像との比較。レタッチした方(左)は影だけでなく彫りも深くなっていて写真の男らしさが増しましたね。
↓女性も
雰囲気が出ましたね。大人の女性。
↓クリリンのKOTOKAAAAAAAAAAAAHHHH!
背景が元気玉のようになりました(偶然)。こういう偶然があるのもレタッチの面白いところですね(↑は『覆い焼き』という『焼き込み』に似たモードを使っています)。
スクリーン・ハードライト・ソフトライトで写真を明るい雰囲気に変える
↓のネコたちを『スクリーン』モードでレタッチしてみましょう。上で紹介した二つのモードと違って明るい雰囲気の写真に変わりますよ。
↓今まで通り「レイヤーとして開く」までの処理を行った状態で、レイヤーモードを『スクリーン』に変えてみると……
↓結果です。フワフワ度が増しましたね。
↑元の写真とレタッチ後のネコの比較。『スクリーン』を設定してあわ~いライトを浴びせることで2匹のネコの写真が柔らかい印象に変わりました。
↓スリーピィ犬
左の方が気持ちよさそう。淡い日光がついて。手も柔らかそう。
↑のネコや犬のように動物の写真をレタッチするときは『スクリーン』機能で淡い陽を加えるのがオススメです。被写体の動物が柔らかく可愛らしい印象に変わります。
なお、GIMPで光を浴びせる方法はこの『スクリーン』以外にも『ハードライト』や『ソフトライト』があります。この二つのモードは食品を美味しく見せるのに非常に便利です↓。
『ハードライト』『ソフトライト』で食品をおいしそうにレタッチ!
では実際にお寿司の写真をレタッチしてみましょう。食品の写真はレイヤーモードを『標準』から『ハードライト』や『ソフトライト』に変えて加工します。
↓『ハードライト』『ソフトライト』
↓『ハードライト』でお寿司をレタッチしてみました
元の写真(右)は色が落ち着いていて元気がなく、くすんだ印象を与えています。一方、『ポスタリゼーション』『ハードライト』で加工するとお寿司が明るく輝いて見えるようになりました! こちらの方がおいしそうですよね。同時に『ポスタリゼーション』でイラストっぽくなっていますのでチラシや看板メニューにも使えます。から揚げやピザも旨そうですよ↓。
↓から揚げ
↓出前ピザ
意図しない形で夜食テロのようになってしまった。ぐぅ~。
このように食品をGIMPで加工する際は比較的はっきりした光を与えると被写体がおいしそうに映りますね。
↓「商品の展示」という枠組みで、ミニカーも
メタリックな質感がいいですね。おもちゃ屋さんのフライヤーにぴったり。
『色相』『色』モードを使って写真を抽象的なイラストに変える
いろいろ考えたり時間をかけて撮った写真を、芸術家がセンスにまかせて描いたような抽象的なイラストに変えてみましょう。その方法としてGIMPの『色相』『色』モードを紹介します。
↓レイヤーモードの変更(右下赤丸のどちらか、今回は『色相』を選びます)
↓モードを『色相』に変えると
『色相』を選択すると写真がお洒落な印象に変わりましたね。『色相』『色』でレタッチする場合、これから紹介する例のような特徴的な写真の方が面白いです。
↓コーヒー跡の女性
↓パック中の女性
↑『色』モードを使ってみました。『色』は写真の色彩を抑えながらレタッチする方法(私の使用感)で、加工した写真は控えめに主張する感じになります。
↓チョコをプレゼント
↓着衣びじ……ちがう着物美人
瞳の優しそうな光がいいですね。ただ、肌色は少し悪いかもしれません(トーンカーブで修正する方法があります。いつか紹介したい!)。
↓オウムの恋
↑元の写真との違いが少しわかりにくいですが、加工後の写真は色や光の塗り方がアバウトな感じで“芸術家のセンス”らしき印象が作られていますね。
↓祝「フリー素材サイト『ぱくたそ』」3000枚突破
クリスマスケーキなどいろいろな要素が映っている写真をレタッチしても楽しいです(『ぱくたそ』はフリー写真素材サイト。今回使用した写真は『ぱくたそ』と『写真AC』のものを利用させていただきました)。
↑のいくつかの例でイメージを掴めたかと思いますが、『色相』は鮮やかで明るめ、『色』は落ち着いた色合いのイラストに変わります。どちらの機能を使うかで微妙に効果が異なりますので、両方とも試してみるのが良いですね(人物写真は肌の色がよりナチュラルに描かれる『色相』の方がオススメ)。
車や戦闘機は外国の喫茶店で見るような絵画調に!
この『色相』『色』機能を使うことで車や戦闘機など乗り物の写真を、海外の喫茶店で飾られてそうな絵画らしくレタッチできます。とくに車と風景の関係性が上手い構図の写真はきれいに加工できますよ↓。
渋いディープな車の写真に変わりましたね。『色相』機能の良さがよく出ていると思います(元にした写真は乾季のウユニ塩湖で撮ったものらしい。ウユニ塩湖は「天空の鏡」と呼ばれていて、水面から上をほぼ完全に反射するのが有名ですね。ウユニ塩湖の、乾季……? あとで調べとこ)。
↓赤い車と広大な自然
↓F-02戦闘機(車以外の乗り物にも『色』機能は使えます)
『色相』『色』を乗り物の写真に使うことで味わいある絵に変わりましたね。
色に変化のない写真は『微粒結合』がオススメ
色の変化のない写真から個性を引き出す方法をご紹介していきましょう。予想もしなかったようなイメージがくすんだ写真から現れてきますよ。レイヤーモードは『微粒結合』を使います(この記事では最後の機能の説明ですね)。
↓『微粒結合』を選択します
↓結果です
『微粒結合』を行うことで金属の“ねばりけ”が上手く表現できましたね。夕暮れの味わいも広がっています。どうしてグレーの写真から色を表現できたのか。それは元の写真(右上)に『ポスタリゼーション』をかけた際に色が出てきたのを利用したからです。
↓ポスタリゼーションレベルをいじってみると……
色がでてきました! 『ポスタリゼーション』をかけたこの写真を下地に『微粒結合』をかけたから、写真のイメージが変わったんですね。
↓黒い車はダンディに
ダンディだけでなくワイルドさも強くなりました。
↓真冬の交通
『微粒結合』を使ってブルーの色を引き出すことで、写真が伝えたいイメージ(ライトの色彩、雪が降り積もった夜の雰囲気)がわかりやすくなりましたね。
↓人物写真に『微粒結合』をかけた場合
この例のように人物写真に『微粒結合』を用いることで優しい色遣いの清楚なイラストを作ることも可能です。
ポスタリゼーションレベルを「2」にして大胆にディテールを落としたイラストを製作する
数値では示してきませんでしたが基本的にポスタリゼーションレベルの数値は大きくしてレタッチしてきました(これまでの例)。逆に、レベルを小さくするとどうなるか。最少の数値は「2」ですので、その2に設定してみましょう。
↓ポスタリゼーションレベルの数値を初期設定の「3」から「2」に変えてみる
ご覧のとおり大きく写真が変わりましたね。ポスタリゼーションレベルの数値を最小の2にすると、写真の色数が極端に抑えられて被写体のディテールがかなり省略されたイラストになります。これに『色相』『色』で少し変化を加えて終了です。
↓元の写真をレイヤーとして開き、モードを『色』に設定しました
↓結果です。『ポスタリゼーション』のみの写真に比べて『色』を加えることでより自然な色合いになりました。
元の写真から大きく変わっている様子がわかりますね。
↓座礁船
ボケた写真もこの通り。鮮やかなイラストに変わりましたね。このように撮影に失敗した写真も救ってやれます。それが『ポスタリゼーション』機能です。
人物写真をコミックイラスト風にレタッチしてみよう!
この『ポスタリゼーション・レベル2』と『色相』『色』機能を使って女性の人物写真を大胆にデフォルメ(省略)されたイラストに変えてみましょう 。フリーペーパーに載っているようなイラスト(?)っぽくなりますよ。
左が『ポスタリゼーションレベル2』、右が『ポスタリゼーションレベル4』で加工したもの。印象が全然違いますね。現実の人間と大きく差のある左の写真の方が目を惹きやすい。
こちらもポスタリゼーションレベルの違いで比較してみました。写真の雰囲気がガラッと変わりましたね。
↓着物女性のイラスト化
目が可愛くなりましたね。それだけでなく『ポスタリゼーション』でいろいろな要素が削ぎ落とされたために、画像の中で両目が際立ってもいますね。この方法でレタッチすることでチャームポイントがわかりやすくなります。
↓浴衣の女性
加工後が少し寂しいので何かイラストを足してみても(背景を描いても)良いです。
↓カウ・ガール
オレンジの色調が西部劇っぽくていいですね。
↓白い部屋で撮影した写真
背景が完全な白になってしまいましたね。これを利用して背景にテクスチャを持ってくることでさらに加工しても面白いかも。
↓希望が見えそうな女性
こちらも何かできそうな画像ですね(そのままでも雰囲気があります)。
ここまで読んでいて気づいた方もいらっしゃると思いますが、『ポスタリゼーションレベル2』でレタッチするとオレンジや茶色、赤のように暖色系がメインに出てくるイラストに変わるという特徴があります(カウガールのレタッチ例がわかりやすいですね)。色を変える方法は現在模索中。
まだまだ人をレタッチしていきますよ
↓みんなで
青春ドラマの最終回みたいになりましたね。 このレタッチは元の写真に映っている人物のディテールが完全に落とされて真っ黒になっているのがポイント。陰影をはっきりさせることができた。
↓壁ドン
非常にポップなイラストに変わりましたね。黒板(上の影)や制服の青が写真をカラフルな印象に変えています。
↓コミケのコスプレ
(もうそろそろコミックマーケットの時期ですね。東京は賑やかでええね(泣))
↓外国の女性1
↓外国の女性2
元の女性の美しいトコロを抽出したようなレタッチ。写真の印象も少しのびのびした感じに変わっています。
以上、人物写真に『ポスタリゼーション・レベル2』『色相(色)』機能でレタッチした例を挙げてきました。↑で加工した画像はイラスト用のパーツと非常に親和性が高いです。自分で何か描いてもいいですが(私には無理)、「イラストAC」などフリー素材サイトを利用して簡単に華やかなイラストが作れます。枠をつけたり背景を持って来たりすると画像のデキが大きく変わりますよ(今度記事に書く予定)。
人物以外の写真もレタッチしていきましょう!
↓前門の虎
↓後門、の?
怠け中でしたね。奥の雑草の緑がきれいに塗られています。
↓クリスマスの飾り
ポストカードのイラストにぴったりな色彩。華やかでポップな写真に変わりましたね。
↓マスコット
以上で終了です。
今回GIMPの様々なモードを紹介しました。『ポスタリゼーション』『乗算』『焼き込み』『スクリーン』『ソフトライト』『ハードライト』『色相』『色』。写真によってどの機能(モード)が合うかは異なりますので、試行錯誤しながら「イイ!」となるのを探してみてください。GIMPで写真をレタッチするのは面白くて3、4時間は奪われますよ。
↓今回の操作をもう一度
↓参考にした書籍。GIMPの機能が詳細に説明されています。
できるクリエイター GIMP 2.8独習ナビ Windows&Mac OS X対応 (できるクリエイターシリーズ)
- 作者: ドルバッキーヨウコ,オブスキュアインク,できるシリーズ編集部
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